ルートブリュックの作品を観に

東京ステーションギャラリーで開催中の「ルート・ブリュック 蝶の軌跡」を観に行ってきました。

まるで幼子の描くメルヘンと言われた初期の作品から、蝶の研究家だった実父の影響を受けたと言われる蝶のモチーフの作品、そしてよく知られている小さなタイルを組み合わせ1つのテーマを描き出した作品まで、作風の変化を追うように展示されていました。


ブルーグリーンのたてがみと、足元に可憐な花を纏ったどこか人の良さそうなライオンは展覧会のアイコンとなっている代表作ですね。

一説には、強面な見た目だけれど内面は優しいルート・ブリュックの夫タピオ・ヴィルカラを模したとありましたが、なんともその通りに思えたのは、優しい口元とほんのりピンク色の頬をしているからでしょうか。


日常目にする自然を落とし込んだ作品の数々には心が温まります。

この作品の鳥達が今ちょうど我が家の小さな庭にかわるがわる来るシジュウカラ、スズメ、ムクドリ、カワラヒワの親子そっくりで、「こっち来なさい」「これ食べなさい」「ほらこっちに来なさい」と羽ばたきも足元もおぼつかないマイペースな雛を一生懸命みている親鳥の姿と重なり、とても微笑ましく映ります。


そして旅先での情景。

同じアラビアのアートスタジオにいたビルゲル・カイピアイネンの技術や作風にも影響を受けたと言われるのも納得できる惹きつける色や立体感。

カイピアイネンの作品には時にゾクッとするような麗しさがあって大好きなのですが、これをみてアラビアでもフィンランドでもないグスタフスベリのバグダッドシリーズが頭をよぎって一層「素敵だなぁ。なんて綺麗な青なんだろう。」としばし見続けてしまいました。


なかでも忘れられないのは実父を見送る葬儀を描いた作品。棺の中央部に描かれた「リネアの花」。(解説を読まずしてリネアの花を察知するのはもはや職業病かもしれません)

リネアの花の名はスウェーデンの分類学者リンネにちなんで名づけられました。そして蝶の研究家であったルートの父は彼女のミドルネームに「リネア」と名付けています。

蝶のモチーフを多く作品にしたことからも、父への畏敬の念、愛情、感謝と別れの悲しみがこの一枚に全て凝縮している気がして込み上げるものがありました(葬儀の作品の前でじっと立ってるなんて俯瞰で見たらただの変人なんでしょうが)。


展覧会には必須の映像コーナーもあり、動くルート・ブリュック、ビルゲル・カイピアイネン、そして光にかざすと透けるライスシリーズの工程を見られたのは密かな喜びでした。今まで点でしかなかった情報が線に変わる時って嬉しいです。

全作品をかなり近くに見ることができて非常に充足感ある展覧会でした。あまりに魅力的でファンタジーな色使いをもう一度改めて見たくなります。

会期は6月16日まで。


<お土産>

この日は友人と会う約束をしていたので展覧会のおすそ分けに落雁をお土産にしました。

「タイルの質感が伝わるようね!」と好評でした。もちろん味も美味しかったですよ。